債務整理とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説

債務整理とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説


借金返済の負担が重くなり、「返済したい気持ちはあるのに、なかなか借金が減らない」という方もいらっしゃるでしょう。

借金の返済が難しくなったときに検討されるのが、債務整理です。

債務整理とは借金返済の負担を軽くできる制度であり、主に以下の3つがあります。

  • 任意整理
  • 個人再生
  • 自己破産

この記事では債務整理の仕組みや、メリット・デメリットについて解説します。

債務整理したいときの相談窓口も紹介しますので、最後まで読んでいただければ、債務整理に向けて具体的な行動が起こせるようになっているはずです。

債務整理とは?

債務整理とは、借金問題を解決し、債務者(借金をしている人)の生活を立て直すための制度です。

どうしても借金が返済できなくなってしまった人を、合法的に救済するための制度なのですね。

具体的には以下のような方法で、借金問題を解決します。

  • 借金を減額する
  • 借金を免除する
  • 支払い(返済)を猶予する

対象となる借金には、「銀行・消費者金融での借金」「クレジットカードのキャッシング・リボ払い」「カードローン」などがあります。

「生活が苦しくて、借金の返済が難しい」「督促が頻繁に来るけれど、返済できない」という人にとって、債務整理は生活を立て直すための有効な手段です。

相談だけなら無料で受けてくれる専門家もいます。

家族や自分の借金問題で困っている方は、一度債務整理について専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

債務整理の手続きの種類や特徴

債務整理手続きの種類と特徴

債務整理の手続きには、いくつかの種類があります。

  • 任意整理
  • 個人再生
  • 自己破産

上記で紹介している債務整理の種類と特徴について詳しく解説します。

元金を5年以内に返済できるなら任意整理

任意整理とは「債権者(消費者金融など)と借金の減額などについて交渉し、借金の支払い総額を減らし、返済期間を延長する手続き」のことです。

借金が減額されて返済期間は延びるので、毎月の返済額は減ります。

元金を5年以内に返済できるなら、弁護士・司法書士からは任意整理をおすすめされることが多いでしょう。

手続きが個人再生や自己破産に比べて短期間で終わり、注意すれば家族にも秘密で進められるからですね。

任意整理の特徴についてまとめました。

  • 家族に秘密で進めやすい
  • 特定の債権者だけを対象にできる
  • 3カ月~半年程度で債権者と和解できる。返済期間は3年~5年ほど
  • 原則として利息・遅延損害金部分のみが減額対象となるため、大幅な借金減額にはつながりにくい

任意整理では、特定の債権者だけを対象にできます。

そのため「住宅や車を残したいので、住宅ローンや自動車ローンはちゃんと払いたい」という人に向いています。

任意整理がいまいちイメージできない方は、金融庁のサイトで掲載されている任意整理のイメージ図も参考にしてみてください。

借金を大幅減額しないと返済のめどが立たないなら、個人再生

個人再生は「裁判所に申し立てを行い、借金を減額して無理なく返済できるようにする手続き」です。

大幅に借金を減額しないと返済のめどが立たない場合、個人再生が検討されます。

個人再生では、借金を1/5~1/10程度まで減額できるからです。

個人再生の特徴についてまとめました。

  • 借金の大幅減額が可能
  • 住宅ローン特例を使うと、ローン返済中でもマイホームを残せる
  • 手続きに1年、返済に3年(最長5年)かかる
  • すべての借金が手続きの対象になる
  • 減額した分は保証人に請求される

個人再生が使えるのは、「借金を減額すれば3年以内に完済できる見込みがある場合」のみです。

すべての借金が債務整理の対象となり、減額分は保証人に請求がいくため、家族や保証人にバレずに手続きを行うのが困難である点に注意しましょう。

まったく返済の見込みがないなら自己破産

まったく返済の見込みがない場合には、自己破産が検討されます。

自己破産とは「裁判所に申し立てを行い、借金の支払いを免除してもらうこと」だからです。

自己破産の特徴についてまとめました。

  • 借金がなくなる
  • すべての借金が手続きの対象になる
  • 財産を手放す必要がある
  • 手続き中は資格や職業が制限される(警備員、保険外務員など)
  • 借金の理由によっては手続きできない(ギャンブル
  • 浪費など)
  • 免責決定までに1年以上かかることもある
「借金が多すぎて、借金総額が年収を超えている」「今以上に借入できない状態」などの場合は、自己破産を検討してみてください。

債務整理のメリット

債務整理のメリット

債務整理を行う場合の、各手続きに共通するメリットを紹介します。

  • 借金が減額または免除される
  • 債権者からの督促・取り立てが止まる

借金が減額または免除される

債務整理のメリットは、借金が減額または免除されることです。

債務整理は借金問題を解決するための制度だからですね。

借金が減額されたりなくなったりすることで、精神的にも経済的にも余裕ができます。

ただし選択する手続きや債務者の状況によって、「どれくらい減額されるのか」や「免責が可能なのか」は異なりますので注意しましょう。

債権者からの督促・取り立てが止まる

弁護士や司法書士に依頼して債務整理の手続きを行うと、債権者からの取り立てが止まります。

債務者から依頼を受けた弁護士・司法書士が「受任通知」を債権者に送ると、債権者(貸金業者・債権回収会社など)は取り立てをストップする決まりだからです。

「督促や取り立てへの対応で疲弊している」という人にとっては、貸金業者からの連絡がなくなるメリットは大きいでしょう。

ただし個人間でお金を貸し借りしている場合、個人の債権者は弁護士・司法書士の介入後も直接債務者に連絡できるので、注意が必要です。

債務整理のデメリット

債務整理のデメリット

債務整理のデメリットを紹介します。

  • 信用情報に傷がつく
  • 財産を差し押さえられる可能性がある
  • 保証人に請求がいく

信用情報に傷がつく

信用情報とは…

クレジットカードやローンの「契約・申し込み」「支払い」などに関する情報のこと。信用情報機関に登録され、個人の信用力を判断するための参考情報となる。

債務整理すると信用情報に傷がつきます。

債務整理の情報は、信用情報機関に「事故」として記載されるからですね。

任意整理であれば5年程度、個人再生・自己破産だと5~10年程度の間は事故情報が残ります。

事故情報が登録されると、クレジットカードやローンの審査に落ちやすくなるというデメリットがあります。

「5~10年間も、新規のクレジットカード発行やローン契約ができなくなる」のは、かなり不便でしょう。

そのため安易に「債務整理しよう」と考えるのはやめましょう。

信用情報についてさらに詳しく知りたい方は、「信用情報早わかり!」の記事を参考にしてみてください。

財産を差し押さえられる可能性がある

債務整理すると、財産を差し押さえられる可能性があります。

債務整理を行うと、車や住宅など「ローン返済中のもの」は、所有権をもつ会社に回収されてしまうからです。

ただし任意整理では、整理対象とする債務を選べます。

そのため「自動車ローン」や「住宅ローン」を債務整理の対象から外せば、差し押さえられることはありません。

個人再生でも、住宅ローン特例(住宅資金特別条項)を利用すれば、マイホームを手放さずに債務整理できます。

自己破産の場合は財産を差し押さえられてしまうので注意しましょう。

保証人に請求がいく

債務整理で減免された借金は、原則として保証人に一括請求されます。

保証人は「債務者本人が借金を返済できなくなったときは、保証人である私が代わりに返済しますよ」と約束しているからです。

ただし任意整理では手続きの対象とする借金を選べるため、保証人付きの借金を任意整理の対象から外すと、保証人への影響を回避できます。

「保証人になってくれた友人や親戚に迷惑をかけたくない」という場合は、任意整理が適しているといえるでしょう。

債務整理のおすすめ相談先

債務整理おすすめ相談先

債務整理について相談したいときの「おすすめの相談先」を5つ紹介します。

  • 弁護士・司法書士
  • 日本司法支援センター(法テラス)
  • 弁護士会・司法書士会
  • 日本クレジットカウンセリング協会
  • 自治体の無料法律相談

弁護士・司法書士

債務整理についての相談先としてまず考えられるのは、弁護士や司法書士(認定司法書士)です。

弁護士や認定司法書士は債務整理を豊富に扱っており、債務整理・多重債務に関するアドバイスから具体的な手続きまで任せられるからですね。

初回の相談料を無料にしている弁護士事務所・司法書士事務所も多くあります。

電話相談・オンライン相談が可能な事務所や休日に相談できる事務所もありますので、利用しやすい事務所を探してみましょう。

ただし1社あたり(1債権者あたり)の借金額が140万円を超える案件については、司法書士では扱えませんので注意してください。

また司法書士が代理人となれるのは、簡易裁判所での裁判のみです。

訴訟がもつれて地方裁判所で裁判が行われることになった場合には、弁護士を探す必要があります。

債務整理を相談する弁護士・司法書士を探したい方は、「【債務整理の相談におすすめの弁護士・司法書士9選】事務所の選び方も解説」の記事も参考にしてみてください。

日本司法支援センター(法テラス)

■日本司法支援センター(法テラス)とは…

国民に対し法的な支援を行う機関。具体的には「法制度に関する情報提供」や「経済的に余裕のない人向けの無料法律相談」「犯罪被害者の支援」などを行っている。

「債務整理をしたいけれど、債務整理にかかる費用を一括では払えない」という方も多いでしょう。

経済的に余裕がない方には、法テラスに相談することをおすすめします。

法テラスからは、以下の援助を受けられるからですね。

  • 無料の法律相談(法律相談援助)
  • 弁護士・司法書士にかかる費用の立替(代理援助、書類作成援助)

条件を満たすと、弁護士・司法書士に手続き代行を依頼したときにかかる「着手金」「各種の実費」「報酬金」を法テラスで立替してもらい、あとから分割払いできます。

費用立替の利用条件は、「収入が一定以下であること」などです。

利用を検討する方は、法テラスの公式サイトを確認してください。

弁護士会・司法書士会

各地域の弁護士会・司法書士会にも、債務整理について相談できます。

各会が運営している「法律相談センター」「総合相談センター」でも、債務整理に関する相談を受け付けてくれるからですね。

初回無料で相談に乗ってくれる相談センターもあれば、相談内容によっては初回から有料となる場合もあります。

利用料の有無や相談時間などはセンターによって異なるため、事前に公式サイトで調べておきましょう。

興味がある方は、「弁護士の法律相談センター」と「司法書士総合相談センター一覧」の各公式サイトをチェックしてみてください。

日本クレジットカウンセリング協会

■公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会とは…

多重債務者や多重債務に陥る恐れのある人に対し、無料で中立なカウンセリングを行う団体。「債務の整理」「生活再建」のサポートを提供する。

日本クレジットカウンセリング協会(JCCO)でも、債務整理についての相談ができます。

日本クレジットカウンセリング協会は多重債務者向けのサポートを提供する団体であり、無料の電話相談と対面カウンセリングを行っているからですね。

「家計を見直せば返済可能」と判断された人については、無料で任意整理をサポートしてくれます。

「弁済計画の策定」や「貸金業者との交渉」を無料で任せられるのは、費用面で困難を抱えている人にとって大きなメリットです。

ただし任意整理に向けて対面でのカウンセリングを受ける場合には、日本クレジットカウンセリング協会の拠点に出向く必要があります。

利用を検討する方は、まず日本クレジットカウンセリング協会公式サイトで相談の流れをチェックしてみてください。

自治体の無料法律相談

自治体の無料法律相談でも、債務整理について相談可能です。

無料法律相談では、自治体から依頼を受けた弁護士・司法書士が多重債務や任意整理についての相談に乗ってくれるからですね。

家から近い場所で、無料で専門家に相談できるのは大きなメリットです。

ただし相談した結果、弁護士・司法書士に実際の手続きを依頼する場合には、費用が発生します。

「相談できる内容」「無料になる範囲」については自治体によって異なりますので、利用前に役所などで確認しましょう。

債務整理でよくある質問

債務整理でよくある質問

債務整理でよくある質問を紹介します。

順番に解説します。

債務整理に費用はかかる?

債務整理には費用がかかります。

債務整理するにあたっては弁護士・司法書士に手続きを代行してもらうのが一般的で、報酬の支払いが必要になるからです。

具体的な報酬金額や報酬体系は、「依頼先となる弁護士・司法書士」「手続きの内容」「債権者の数」などによって異なります。

おおまかな費用相場をまとめました。

任意整理 5~15万円程度
個人再生 50~80万円程度
自己破産 30〜130万円程度

全体的には司法書士のほうが報酬金額は低めに設定されています。

ただし司法書士だと扱える借金の額に上限(140万円/社)があるため注意しましょう。

債務整理って自分でできる?

「債務整理するのにお金がかかるなら、自分でやりたい」と思う方もいるかもしれません。

結論から言いますと、自分でも債務整理の手続きはできます。

法律で「弁護士や司法書士を介さないといけない」とは決まっていません。

ただし自分で債務整理の手続きをするとかなり労力がかかりますし、精神的な負担も大きくなります。

また弁護士や司法書士に任せたほうが、減額できる額が大きくなる可能性も高いです。

上記のことから、債務整理の手続きをするのであれば、弁護士や司法書士に依頼することをおすすめします。

債務整理したいけど、どこからいくら借りているかわからない状態。どうしたらいい?

まずは信用情報機関に情報開示を請求しましょう。

債権者がわからないと、弁護士や司法書士に手続きを依頼できないからです。

「債権者の数」「借金の総額」によって、債務整理の方向性がかなり変わってくるからですね。

また「借りている金融機関ごとのアドバイス」も、債権者がわからないと受けられません。

日本には「CIC」「JICC(日本信用情報機構)」「全国銀行個人信用情報センター」という3つの信用情報機関がありますので、それぞれに情報開示の手続きをしてください。

親が債務整理すると、子どもの進路や結婚に影響する?

親が債務整理しても、子どもの就職や結婚に直接的な影響が出ることはありません。

子どもの就職先となる会社が、「内定者の親が債務整理した」という事実を知ることはほとんどないからです。

また個人再生や自己破産では官報で氏名・住所が公表されるものの、家族の名前は掲載されません。

官報とは、国が発行している新聞のようなもの。法律の制定・改正や、破産・相続に関する裁判の内容が掲載される。

いちいち官報をチェックしている個人は少ないと考えられるので、子どもの結婚相手などに「婚約者の親が債務整理した」と知られる可能性もかなり少ないでしょう。

債務整理して信用情報に傷がついたら、スマホももてなくなるの?

債務整理をして信用情報に傷がついても、スマホはもてます。

「債務整理の手続きの中で、スマホを手放す必要があるケース」は稀だからです。

また債務整理後にスマホを買い替える場合でも、スマホ本体を一括払いで購入するなら審査はないので、問題なく購入できます。

ただし債務整理後、スマホ本体を分割払いで購入するのは難しいと考えましょう。

スマホの本体代金を分割払いする場合、携帯キャリア各社は信用情報機関に登録されている情報をチェックして審査を行うからです。

また個人再生・自己破産時に「月額料金の対応」「スマホ本体代の分割払いが終わっていない」という状態だと、携帯を強制解約されることがあります。

強制解約の記録は他の携帯キャリアと共有されるので、強制解約されると乗り換えや新規契約が難しくなると考えてください。

滞納している税金や国保の保険料も債務整理できる?

結論から言いますと、滞納している税金や国保の保険料は債務整理できません。

税金などは法律で「非免責債権」とされているからですね。

非免責債権とは、自己破産の手続きをしても支払い義務が免除されない債権(借金)のこと。代表的な例としては「税金」「国民年金の保険料」「国民健康保険の保険料」「養育費」「交通違反の罰金」などがある。

ただ税金や国保の保険料を支払うことが難しい場合には、「支払い方法の変更」「猶予」「減免」といった救済措置を受けられるはずです。

税金や保険料の支払いが難しい場合には、自治体の窓口に相談してみることをおすすめします。

まとめ

債務整理とは借金問題を解決できる制度であり、「任意整理」「個人再生」「自己破産」があります。

どの手続きをチョイスするのが適切なのかは、「借金の総額」「収入や生活の状況」によって異なりますので、弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。

債務整理は自力でもできますが、「減らせる借金の額」「労力や精神的な負担」を考えると、専門家に任せるのがおすすめです。

「いきなり弁護士事務所や司法書士事務所で相談するのはハードルが高い」と感じる方は、自治体の無料相談や弁護士会・司法書士会の相談センターを活用してみてください。

ひとりで悩まず、相談してみることが大切です。