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高齢者の財産を守る生前対策その2「生前贈与」

生前贈与とは、高齢者が自らの意思で、まだ存命中にその財産の一部または全部を家族や特定の人物に移転することを指し、相続が開始する前に財産を計画的に承継させる手段として広く用いられています。相続が開始した後では、遺産は法律の規定や遺言書の内容に基づき分割されることになりますが、生前贈与を活用することで、本人が望む相手に確実に財産を譲り渡すことが可能になります。この仕組みは、単なる財産の移転にとどまらず、相続人同士の将来的な争いを予防する効果や、贈与を受ける人の生活支援としての役割を果たす点で非常に意義深いものです。

 

例えば、高齢者が長年自宅で一緒に暮らし介護を続けてくれた子どもに自宅を贈与する場合、相続の段階で他の相続人と意見が衝突し、自宅を売却して現金化せざるを得なくなるような事態を防げます。これは、残された家族が安定した生活を送る上で大きな意味を持ちます。また、生前贈与には税務上の観点からも重要なメリットがあります。日本の相続税法上、贈与税には基礎控除や特例が設けられており、例えば暦年課税制度を利用すれば、年間110万円までの贈与であれば非課税で財産を移転できます。これを複数年にわたり活用することで、相続時に集中して課税される財産の総額を減らし、相続税の負担を軽減できるのです。さらに、住宅取得資金の贈与や教育資金、結婚・子育て資金の贈与に関しては、一定の条件を満たせば非課税枠が拡大される特例も存在し、これらをうまく利用することで、贈与を受ける側のライフイベントを支援しつつ、税務上の効果も得られます。

 

もっとも、生前贈与は万能ではなく注意すべき点もあります。例えば、相続開始前の3年以内に行った贈与は「持ち戻し」として相続財産に加算されるため、単純に相続税対策として利用するには計画性が求められます。また、贈与契約は口頭でも成立するものの、後日の紛争防止や証拠確保の観点から、贈与契約書を作成し、場合によっては登記などの法的手続きを経ておくことが望ましいです。特に不動産の贈与においては、登記をしなければ権利の移転が第三者に対抗できないため、実際には贈与が完了していないと見なされるリスクも存在します。

 

さらに、贈与を受ける側に贈与税の負担が発生する点も見逃せません。高齢者が善意で財産を移しても、受贈者が納税資金を確保できずに困る事態もあり得ます。そのため、実際に生前贈与を行う際には、税額の試算や資金計画を含めた総合的な検討が欠かせません。弁護士など専門家に相談しながら進めることで、想定外のトラブルを回避しつつ、本人の希望を最大限実現することができます。

 

このように、生前贈与は単なる財産の移転にとどまらず、本人の意思を生前に明確に示すことで、残された家族に安心をもたらす効果があります。相続開始後には実現できない柔軟な承継方法を選べる点や、税負担を軽減できる可能性がある点を考えると、老後の財産管理や家族への配慮を具体的に形にする有効な手段であるといえます。生前贈与とは、高齢者が財産を守りつつ、その意思を将来に確実に伝えるための実践的な生前対策の一つであり、慎重な計画と適切な専門家の助言を伴うことで、より大きな効果を発揮するのです。

カテゴリ:お知らせ

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