ここでは親が認知症になった場合におこるトラブルを詳しく紹介します。
・親が認知症になった場合のトラブル その9
認知症のリスクの一つとして、自身の財産の詳細を忘れてしまうリスクが高まります。財産の種類や所在、内容を正確に把握できなくなることで、適切な管理が困難となる場合があります。このような状況では、本人が何を所有しているのか把握できず、財産の一部が未確認のまま放置されてしまう可能性があります。
例えば、複数の銀行口座を所有していた場合、認知症による記憶障害により一部の口座の存在を忘れてしまい、預金が放置されることがあります。また、株式や投資信託などの金融資産についても詳細を忘れてしまえば、適切な運用が行えず、資産の価値が減少する可能性が高まります。不動産に関しても、所有している土地や建物の場所や用途を思い出せず、税金の未払いが発生したり、放置された不動産が管理不全に陥ることがあります。
こうした事態が続くと、財産を有効に活用できないばかりか、相続の際に後継者が全ての財産を把握することが難しくなるため、相続手続きが複雑化し、争いの種となることも考えられます。また、放置された財産に対して第三者が不正に介入するリスクもあり、さらなるトラブルにつながる恐れがあります。
このような事態を防ぐためには、認知症になる前の段階で、財産の詳細を明確にし、その管理方法を確立しておくことが重要です。財産のリストを作成し、信頼できる家族や弁護士のような専門家に情報を共有することで、将来的な財産管理の混乱を未然に防ぐことができます。また、民事信託や財産管理契約などの制度を利用しておくことで、財産の所在や内容が正確に把握され、管理が円滑に進む仕組みを整えることが可能です。