事業承継とは、高齢となった経営者が自分の引退後も事業が安定して続くように、会社の経営権や資産、ノウハウなどを後継者へ引き継ぐための準備と手続きを指します。中小企業では特に、経営者個人の判断や経験が事業の根幹を支えていることが多く、適切な時期に計画的な承継を行わなければ、会社の存続が危うくなる場合もあります。そのため、事業承継は高齢者の財産を保全し、従業員や取引先を守るためにも欠かせない重要な生前対策といえます。
事業承継では、誰を後継者にするのかを明確にすることが最初の課題になります。後継者は、子どもなどの親族が務めることもあれば、社内の幹部社員や第三者が担う場合もあります。誰が後を継ぐのかによって必要な手続きや準備すべき内容が異なるため、早い段階から候補者を決め、育成に時間をかけることが重要です。また、後継者がスムーズに経営を引き継げるよう、事業の現状や経営方針、財務状況を共有し、必要な教育と引き継ぎを段階的に行うことが求められます。
さらに、財産的な側面の整理も重要なポイントです。会社の株式や事業用資産、負債をどのように承継するのかを明確にし、遺言書や株式の移転手続きなどを整えておかなければ、相続が発生した際にトラブルを招きかねません。特に、株式の分散により経営権が不安定になることを避けるため、計画的に株式を後継者へ移しておくことが効果的です。また、税負担を軽減するための対策も欠かせず、贈与税・相続税の特例を活用することで、後継者が安心して事業を引き継げる環境を整えることができます。
事業承継には時間がかかるため、経営者が元気で判断力がしっかりしているうちに準備を始めることが理想です。承継の準備が整っていれば、経営者自身の老後の生活も安定し、会社としても継続的な発展が期待できます。計画的かつ丁寧な準備を重ねることで、経営者の築いた財産を守り、次世代へ確実に引き継ぐことが可能になります。

